ダブル・デュースの対決(3)

作者:佐藤@Celaeno
[2019/06/03(月)]
「初秋」

[ダブル・デュースの対決(2)] [キャッツキルの鷲(1)]

「どうだ。見つかったか」と、丸い眼鏡を架けた男が言った。 男は、双葉会傘下のある組の構成員であった。 男が受けた命令は、興信所の所員で社長である比企谷八幡の抹殺と、相馬佑司の奪還であった。 雪ノ下雪乃は出来得る限り危害を加えずに仕事を片付けることという付帯条件が付いてた。 「甘いな。相馬と繋がりがある俺たちが疑われるだろうに。全員消すか拉致した上で然るべき処理をする必要があるだろうに」と小さく呟いた。 「『軍曹』、さっきの爆発でそこら中ひっちゃかめっちゃかだ。瓦礫を除けるだけでも一苦労だぜ」 「こんな面倒なトラップを仕掛けてやがったとは、想定外だった。お前等、地下室を捜してみろ。俺は二階を捜す」と眼鏡の男はパンチヘアーの男に言った。 「『軍曹』、あっちの小さい小屋はどうだ。うっすらと明かりが見えている」と、ごま塩頭の男が言った。 「うん?しまった、なんであんなところに小屋がある。衛星写真にも映ってなかったぞ」眼鏡の男が言っていた衛星写真とは、なんのことはない。某検索会社が公開している地図で観たもののことだった。といっても、某検索会社のサイトをクラックして得た最新映像で、ものは半月ほど前に撮られたものだった。 開けていないとはいえ、直上は木の枝などが被っていないのだから、写っていないのがおかしいのだが、なにか偽装処置を施してたのか、それとも先手を打たれてクラックして写真を古いものと掏り替えたたのかもしれなかった。 実際には、八幡は上に軽く偽装ネットを張っていただけであったが。 「・・・・・もしかしたら、奴が待ち伏せしているかもしれん」 「しかし、これだけの騒ぎでもう逃げ出しているかも・・・」と言ったところで、何かの影が窓で動いた。 「そっちだ!」小屋の中から、なにか飛び出してきた。影の形からみて比企谷ではないと思われた。では、雪ノ下雪乃なのか。「『アフロ』、お前は右手をにまわれ。退路を断つんだ。『坊主』は左手に回り込め。挟み撃ちにしろ。なんとしてもあと10分で決着をつけるんだ。この騒ぎで県警が来るまでに探し出さないといかん」 「「わかった」」 瓦礫の隙間から佑司と雪乃は三人の様子を伺っていた。彼女たちがいたのは、脱衣所の中であった。別荘には、簡易型の対爆仕様のパニックルームがいくつかあって、その一つがリビングから裏手のキッチンに伸びる途中にあるバスルームであった。他には地下室と、二階のシャワー室兼トイレがそれにあたる。 八幡と佑司が帰ってくる途中、何物かに尾行されているらしいことを八幡が察知していた。彼は雪乃に迎撃の準備を整えさせた。別荘に無断で設置してた自爆システムを利用して襲撃者を撃退しようとしたのだ。だが、彼らはどういうわけが大した怪我は負っていない。見た目は生身に見えるが、どうやらサイボーグらしい。 サイボーグ手術なんぞ、軍か警察の特殊部隊でなければ受けることが出来ないはずだが、男たちの動きをみていると雑でとてもじゃないが優秀には見えなかった。 「違法手術かしら」と雪乃は呟く。だが、観ると彼らがいた足下には、爆弾処理班が使うような、対爆チョッキが落ちていた。実際には、皮膚組織だけを耐熱コーティングした皮膜で覆い、前面にあれを付けていたのか。だとしたら、農薬で作った手製爆弾を防げたのも納得がいく。殺してしまっては後々面倒になるからと、クレイモアのような地雷は設置していなかった。それが連中にとって幸運だったのだろう。 「せめて、ゲルテックスでもしかけとけば良かった」 「なんで、こんな・・・・」 「昔、警察に居た事は言ったでしょ。こういうのはお手の物なの」 「そうじゃなくて、なんで僕を連れ戻すのにこんな手の混んだ事を」 「あなたが連中の悪事を知っていて、お父さんの下を逃げ出したから。相馬祐介の下にいる限りは黙って見過ごすつもりだったんでしょうけどね。捕獲だけが狙いならいいけど」 「良い分けないだろ。嫌だよ。あんな連中と関わりをもった奴の下に戻るなんて」 「・・・・・怖いことを言うようでなんだけど、捕まったらお父さんの下に帰れるのは最良のシナリオよ。もしかしたら口封じに・・・・」 「えっ、、、」 「だから、これから絶対に私の言う事をきいて。でないと、生き残れないわよ」 「Shit!」 『ごま塩』は、今日二つ目の罠にかかった。脚がロープにひっかかり、前のめりに倒れそうになったのだ。咄嗟に銃を離して手近な『木の枝』を掴んだ。辛うじて倒れるのを止めるが、喉に細いワイアーがが食い込んでいた。ゆっくり身を起こし、腰に差したナイフで彼の首に食い込んだワイアーを切ろうとすると、彼のナイフはバターのように切れてしまった。 「!」 「なにをしている!!」 「俺、もう行けない」 「なにを言っている。逃げた奴を捕まえるんだよ」 「トラップで危うく死ぬところだった。だが、、、、」彼が掴んだ『木の枝』を見ると、どうやらそれは人工的に置かれた手摺であったようだ。 「これは『命を祖末にするなって』メッセージだ。後はは頼む・・・」 「けっ、お前、瀋陽で散々な目にあって今更臆病風が出てきたのか。俺はまだひかないぜ」 『じゃあ、死にな』とどっからか聞こえた声と共に、『アフロ』の身体が金属の暴風雨に引き裂かれた。 「全く、これじゃ割に合わないぜ」といって、木の枝の向うから薄らと亡霊が出てきた。 「な、なんだ!?」幽霊はだんだんとがっしりした男の影に変わって行った。 「すまないが、お前さんを逮捕させてもらうよ。県警組対の材木座警部補だ。お前には黙秘権がある。以降、お前の口から出てきた言葉は証拠となるから口を開くときにはよく考えてからにしろよ」と銀髪の大男は言った。 「糞っ、一体どこに行きやがった」と『眼鏡』は毒づく。暗い雑木林の中、標的の姿は見えなかった。 両翼にいるはずの二人の部下の姿も見えない。 「あいつら、軍に居た頃から全く役に立たなかった・・・・」更に進むと、目の前にうずくまった黒い影が見えた。 「パンッ!パンッ!パンッ!」相手の正体も確かめず、ボディー目がけて銃弾を打ち込んだ。そうすると、大きな音をたて左の報に倒れ込む。その倒れた影にジリジリと近づいて、影に被さったゲイリースーツをはぎ取ると、中から機械人形が出てきて立ち上がると口を開いた。中からは、舌状のなにかが出てきて「はずれ!」と描いてあった。 『動くな』後頭部に銃口が突き付けられている。『眼鏡』は自分がうっすらと脂汗をかいているのを感じていた。 「なあ、まさか殺さないよな。お互い、仕事でやっているだけだぜ」 「仕事で人殺しか。なかなかいい商売じゃないか。だが、お前さんもプロだろ。プロなら、殺し殺されは納得づくのはずだよな」 「お願いだ。せめて、脳だけは」 「サイボーグか。じゃあ、頭で正解だったな。それとも、腹に脳殻を納めているタイプかな」といって、もう一つの銃口か背中に突き付けられる。 「お願いだ。なんでも話す。だから、後生だから殺さないでくれ」 「別に、お前さんが話さなくても、優秀な警官の友人がお前達の遺留品から辿ってお前さんたちの親分たちを処理してくれるぜ。だから、お前はここで用済みだ」 「双葉会に頼まれたんだ!!双葉会、あいつらアジアや東欧から流れてきた難民を『教育』して、元居た国に返しているんだ」 「ほう、わざわざ教育をし知識を付けさせてやってって、双葉会の親分さんたちも随分な篤志家だな」 「ああ、そうだろ・・・へへへ」と、『眼鏡』は下卑た笑いを吐き出す。 「その教育てのは、テロや対テロ部隊への対抗部隊に仕立て上げることか」 「そうだ。双葉会は『政情不安な三日月』にある様々なテロ組織やゲリラ、それと対抗する軍や警察に子供達を卸している」 「商売繁盛だな」 「はっ、、、、はっ、そうかい。で、その、そこまで話したんだら、俺を・・・・」 「いや、いよいよ赦せなくなった。そんな非道な行為をする外道を活かしておけるほど俺は寛容じゃない!」 「ひっ!助けてくれ!!」 「やめろ、八幡。お前がいまこの状況でそいつを殺したら、俺はお前を逮捕しなくちゃならなくなる」と、材木座が後ろから声をかけてきた。 「やってみろよ」 「本気だぞ」  暫く無言でそのままの状態をいた三人であったが、やがて八幡左手に持ったアサルトライフル状の木の模造銃を振りかぶると『眼鏡』の横腹を殴りつけた。殴りつけられた『眼鏡』は、うめき声をあげて崩れ落ちた。 「密輸だけじゃなかったんだな」 「国内で使用するためじゃないだろ。訓練用かもしれない・・・・」 「しかし、日本のヤクザも堕ちたな・・・・」 「元からだろ。胸くその悪くなる連中だ」 八幡が別荘に戻ると、燃え上がる別荘の傍に雪乃と佑司が立っていた。 「八幡、無事だったのね」 「ああ、無事だ。お前達も大した怪我がないようでよかった」 「久しぶりです。雪ノ下警視」 「もう警察は辞めたんだから、警視は止して頂戴」 「そうですな。じゃあ、奉仕部部長とでも呼びますか。今回は、この子が救済対象なんですね」 「ええ」そういう雪乃の後には、佑司が無表情に突っ立っていた。 「佑司」と八幡は呼びかける。 「お前は俺たちが守る。そして、お前のために決着を付けねばならん」 そう言うのだが、佑司は相変わらずなにも反応しない。 「どうしたんだ。何か言ったらどうだ」 「俺、親父のところに戻るよ」 「なに?」 「こんなに迷惑かけてごめんなさい」 「あなた、さっきは・・・・」 「でも、もういいんだ」というと、佑司は八幡に向き直って言った。 「俺、もういいんだ。どうせ、俺のことなんで誰も愛していない・・・・。だから、」と言って唇を噛み締める。 「佑司、俺たちはお前のことを・・・・」 「遺伝的に繋がっていても愛していないんだろ!だから、自分たちとも関わりを持たせない方向で、問題を解決しようとしているんだ。そんな人たちに、俺の人生をどうこう思われたくない!!」 「佑司・・・・」 四人はただただ、燃え盛る火によって照らされる夜の林の中で立ちすくんでいた。 (つづく)

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